[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
お題配布元:http://99.jpn.org/ag/
[08] 夢物語
青々とした緑が公園を彩っていた。
ベンチに一人、青年が腰掛けている。彼は携帯電話をひたすら操作していた。何かを手短に打ち込み、顔を上げる。微かに振動が響き、再度携帯電話を覗き込む。先ほどからそんなことの繰り返しであった。
「……マジかよ」
彼の携帯電話には一通のメールが表示されていた。
『今日一日タカシを預かってくんない? いきなり用事がはいっちゃって(笑) 弟よ、頼んだ』
丸一日子供の面倒を見ろ。
そんな姉の声が頭に直接響いた気がする。毎度ながら、人使いというか、弟使いが荒い。
「わーったよ。見とけばいいんだろ見とけば……」
俺は小さく舌打ちをし、親指のみで素早く返信を打った。
「おじちゃん。今日は何をする?」
「俺はまだ19だ。お兄さんと呼べ」
苛立つ青年と無邪気な少年。一見兄弟とも見えない構図だが、叔父と甥という関係にある以上、“おじちゃん”と呼ばれることに問題はない。それでも青年の苛立ちは消えなかった。
甥は確か、まだ小学生であったか。ただでさえ苦手な子供の顔に更に苦手な姉の顔を連想させ、苛立ちは増す。
とりあえず公園の遊具に連れて行き、勝手に遊んでいるよう言いつけた。「一緒に遊ぼうよ」なんて言われた気がしたが、生憎子供と遊ぶなんて高等技術は持ち合わせていない。
俺は適当にベンチから眺めていた。
「ねぇおじちゃん」
「だから、お兄さんと呼べと何度言ったら」
「僕の夢を聞いてくれる?」
おじちゃんと呼ばれることに激しい反感を感じる。が、唐突に彼の口から出た言葉に眉をひそめる。何が楽しくてこんな子供の夢なんて聞かなくてはならないのだ。
だが、興味だけはあった。最近の子供なんてのは夢見がちだからな。
「えっとね、僕はね、――
「お疲れさん。助かったわ」
「……そりゃどうも」
夕暮れ時。空は赤色に染まり、カラスが飛んでゆく。
公園の道を一組の男女が歩いていた。女性の背中には押さない少年が眠っている。青年とはいえば先程から不機嫌そうに俯いている。
「で、なんでアンタはそんなに落ち込んでるわけ?」
「姉さんには関係ないだろ」
ぶつぶつと口の中で呟きながら青年は女性を睨む。どうやら兄弟らしい二人組は公園を出て、住宅街へ入っていった。
まさか、あのガキが俺と同じ夢だとはな。
『僕は将来ね、お医者さんになって皆を助けたいの!』
それは、もしかするとただの夢物語かもしれないぞ。
--------------------------------
散々悩んだ挙句。
うーむ…ビミョウな気がw