忍者ブログ
超短編やサイトのお知らせなど。 (推敲ナシの一発書きなのでご了承ください)
[11]  [10]  [9]  [8]  [7]  [6]  [5]  [4]  [3]  [2]  [1
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


お題配布元:http://99.jpn.org/ag/


[04] 皺

 昔々ある国に、とても美しいお姫様がいました。
 しかし、そのお姫様はいつも不機嫌なことで有名でした。
 いつも眉間に皺を寄せて、何かに対して怒っています。
 そのためか、誰もお姫様に近づく人はいませんでした。傍にいれば鋭い声で怒鳴られるからです。
『どうして私は一人ぼっちなの』
 あるとき、いつものように眉間に皺を寄せながら彼女は言いました。
 お姫様の質問に答える人はいません。
 それに対して、お姫様はまた腹を立てました。

 
「……その後、お姫様は一生一人で暮らしました。めでたしめでたし」
 そう言って語り手である女性はまだ残りページの多い絵本を閉じた。そばで眺めていた少女が不服そうな声を上げる。
「全然めでたくないじゃないの。それにまだ本は終わってないわ」
「まぁ、落ち着いてゆうか。これからは私の考えたお話をするね」
 ゆうか、と呼ばれた少女が顔を上げる。彼の眉間には物語の姫と同じく、深い皺が刻まれていた。世話役であるその女性は一つため息を付き、ゆうかに視線を合わせるようにしてしゃがむ。
 彼女はあまり笑顔を見せない。
 特に親から虐待を受けているとか、そうった事情があるわけではないのだが……どうも性格の問題らしい。
 視線を合わせたことで子供扱いされたと思ったのか、ゆうかは更に不機嫌になる。
 また女性は溜息を付き、物語の続きを語り始めた。


 しばらくのあいだ、お姫様は一人で過ごしました。
 最初のうちはなんとも思いませんでしたが、そんな生活を続けるうちに、急に人が恋しくなりました。
 しかし、お姫様の住む小さなお城には誰もいません。
 なぜ自分は嫌われるのだろう。
 そう考えているとき、お城に一人の王子様が訪れました。
『おや、女性がそんなに眉間に皺をよせてはいけないよ』
 彼はお姫様を見るなり彼女にそう話しかけました。お姫様は苛立ちながら答えます。
『いきなりあなたが無礼なことを言うからよ』
『これは失礼。……けれども、いつもそんな顔なのかい?』
『そうよ。誰も私と話してくれないもの』 
 お姫様がそう言うと、王子様は考えるような素振りを見せて言いました。
『はて……それは不思議な話だ』
 そうしてお姫様の眉間の皺を指差しました。
『これがあるから皆寄ってこない。違うか?」
 お姫様ははっと自分の手鏡を見ました。不機嫌そうな自分の顔はとても酷いです。
『人は笑顔でなければ。君は美しいんだから、もっと笑ってごらん』
 お姫様は戸惑い、しばらく手鏡とにらめっこをしました。口を引っ張ってみたりしましたが、なかなかうまく笑えません。しかし、その様子を見て王子様が笑いました。
『そんなに無理はしなくて良い。自然に、笑うんだ』
 王子様が笑うのを見て、お姫様はつられて少し微笑みました。それはそれはすみれのようにささやかな美しさでした。
『ご覧。前の君よりずっと素敵だ』
 それ以来お姫様の周りには人が戻ってきました。
 このお姫様と王子様は末永く幸せに暮らしたそうです。めでたしめでたし。


「……と、言うわけで、ゆうかも笑ってみなさい?」
 そう女性が声を掛けると、ゆうかがきょとんと目を丸めた。今の物語は理解したけども、なぜ自分が。といったところか。
「ほら、人は笑ってるときが一番可愛いんだから!」
 ゆうかは戸惑ったように視線を迷わせ、小さく呟いた。

「……私は、お話とは違うんだから」

 ゆうかの眉間の皺は、刻まれたままであった。

-----------------------------
結局少女の笑顔を見る事はなかった。的な

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
トビエダ
HP:
性別:
非公開
職業:
学生
趣味:
ラノベを読むこと、書くこと。
ブログ内検索
pixiv
最新コメント