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[11] lesson
「あの……、その、えっと……」
「どうしたの?何か用事?」
とあるマンションの一室。麻子(あさこ)は友達にある一つの頼み事を抱えていた。
しかし、先程から言い出せずに十分が経過している。友達の麻紀(まき)はあくまで気軽に用件を聞いてくる。おかげでますます言いづらくなってきた。どうしよう。
そういえば麻紀と私が仲良くなったのって名前の漢字が一緒だったからだっけ。苗字も近いもんなぁ。というか麻紀ってホント大人っぽくっていいなぁ。私に少し分けてくれたらいいのに。
「……ねぇ、言わないと私買い物行っちゃうよ?」
いつの間にか雑念に思考が行っていた。意地悪そうな笑みを乗せて麻紀が微笑む。この状況でここに一人放置されるのだけは勘弁だ。麻子は意を決して口を開いた。
「え、えと、……私にピアノ教えてくだひゃい!!」
噛んでしまった。最悪だ。麻紀は意表を付かれたように丸く目を開いている。数秒間部屋に沈黙が降りた。麻子は頼み事よりも、語尾を噛んでしまった事に頬を真っ赤に染め上げた。
「……え、何、ソレだけの事で十分も悩んだの?しかも最後噛んでるし」
笑いと同時に失敗点を二つも上げられる。麻子は恥ずかしさで手元のクッションに顔を埋めた。
麻子は一ヶ月後に保育士の試験を控えていた。
試験自体は心配は無かったのだが、実技試験である弾き語りがどうしてもクリアできない。ピアノ以外の楽器でも良いそうだが、麻子が操れる楽器はリコーダーくらいなものだ。
これまで練習を重ねてきたが、やはり素人の我流では限界がある。
「まったくもー、なんでもっと早く言わないかな」
「だ、だって……幼稚園の先生目指してるのにピアノが弾けないって恥ずかしいじゃん!」
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥っていうでしょー。って、微妙に意味違うけどさ」
ほとんど涙目で麻子が訴えかける事に対して、麻紀は呆れたように相槌を打つ。
「ピアノなんてさ、一ヶ月で出来るもんじゃないよ?それに私、習ってたのもう随分前だし」
「完璧にとは言わないって!お願い、一生のお願い」
まるで神様にでも拝むように麻子は手を合わせる。“一生のお願い”なんて陳腐な物で麻紀が揺らぐとも思えないが、こちらは切羽詰まっている。
「……お昼」
「え?」
急に麻紀がぽつりと呟く。一瞬何を意味するかわからず、麻子は首を傾げた。
「明日と明後日のお昼代出してくれたら、教えてあげてもいいよ」
思いっきり高いランチ選んでやるんだから、と添えて麻紀はピアノの蓋を開けた。了承されたことに喜ぶか、急に出来た出費に悲しむべきなのか悩む。が、まずはこの一言かな。
「ありがとねー。麻紀ちゃん大好き」
「お世辞言っても安くしないわよ」
一週間ぶりです。
なんでこんなに間が空いたかというと、単純に課題に追われてただけです←
まだ入学さえしてないのに課題やたら出す学校とかなにそれ鬼畜。