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[06] ガラクタ
「ねぇお兄ちゃん。このガラクタ何?」
無邪気な弟の問いかけに僕は苦笑する。僕らはかなり歳の離れた兄弟だ。僕はもう大学生だが、弟はまだ10歳にも満たない。そんな弟からすればコレはガラクタ以外の何者でもないかもしれない。
「これはね……何て説明すればいいのかな。……そうだ。僕の宝物だよ」
「えー……こんなのが宝物なの?」
噛み砕いた言葉でも弟は理解できなかったようだ。まぁ、弟だけじゃなくて誰にも理解できないか。
目の前にあるのは、壊れた人型の機械だった。
時は数年前に遡る。まだ僕が今の弟並みに幼い頃の話だ。
僕は、『彼女』に出会った。
『彼女』は……なんというか、僕の友達だった。少し言葉がきごちなかったり、反応が遅いときがあったが、そんなことは気にならなかった。
『彼女』はどこかの大学が生み出した最新のロボット、だったらしい。しかし更に最新のものが出て『彼女』は用済みになった。そして僕の所まで回ってきたのだ。
一見すると人間と大差ない。少なくとも幼かった僕は人間だと信じて疑わなかった。
機械が心を持つ、なんておとぎ話のようなこともあり得るほどに『彼女』は人間らしかった。
しかし、機械は人間以上にすぐに壊れる。
『彼女』は、バグを起こして壊れてしまった。『彼女』のプログラムが全て損傷してしまったのだ。
もうその目が光ることも、声を聞くことも、笑顔を見ることも出来ないと知ったとき、僕は愕然とした。
本体の損傷ならパーツを取り替えれば済むかもしれない。しかし、中身のデータは復帰できなかった。確かに中に存在するのだが、それを使うことが出来ない。
もしかすると、壊れたデータを直すことが可能かもしれない。
それからというもの、僕は必死に勉強した。どうしても『彼女』に言いたいことがあったからだ。
あれからもう10年の月日が経つ。
あれから本体は劣化が進み、弟の言うとおり『ガラクタ』 に成り果てていた。本体をいくら綺麗にしても材質事態の劣化は防げない。
今の『彼女』に僕の声は聞こえるだろうか。とてもとても大切な宝物に、僕の声は届いているのだろうか。
僕はこの数年で膨れあがった思いを口にする。
「愛してる」
『彼女』の瞼が少し動いたような気がした。
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珍しく微SFに挑戦。
こんなものでいいのだろうかw
まぁ、練習ですし。