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久しぶり。しばらく会えなくて申し訳ないね。
そうそう、今日はとっておきのお土産を持ってきたんだ。
ほら見てごらん。「最強最高人工殺戮兵器」だ。
はは、そんな驚いた顔をするなよ。正真正銘本物だ。ここのスイッチを押せば五分後に全世界の人間が滅びるんだ。跡形もなく、ね。
君は憎んでいるんだろう?人間を。君に酷い仕打ちをした人類すべてを憎んで憎んで仕方ない筈だ。ずっと呟いていたじゃないか。『人類なんて滅びればいいのに』ってね。
冗談なんかじゃない。苦労して手に入れたんだから、君に使って欲しいんだ。


さて、これで準備はすべて揃ったよ。五分後にこの世から人間はすべていなくなる。
君も案外度胸があるんだね。人類全てを滅ぼすボタンを何の躊躇いもなく押すとは。
これで全てが終わるんだ。
君はもしかして、今凄い開放感に満ち溢れているのかな?
そういえば、わかってるのかい?『全世界の人間が滅びる』ってことは、君も僕も消えてなくなるんだよ?僕らは、このあと五分後の未来にはこの世から去るんだ。いや、もう四分半くらいかな。
死ぬ、って、どういう感覚なのかな。
よく天国とか、死んだ後の世界って奴を信じてる奴がいるけど、僕はそうじゃないと思ってる。
死ぬってことは、外の世界を感じ取れなくなる事だと思うんだ。
人間ってね、自分の感覚器官でしか外の世界を感じ取れない。つまり、自分の内に閉じ込められているんだよ。そう思うと恐怖だよね。だって僕らは永遠に自分の殻から外に出られないんだから。
だから、死ぬときはすべての感覚が打ち切られて、そのまま意識も消えていくんだ。
まぁ、この兵器だとその間は一瞬だろうけどね。
僕の持論だけどね、打ち切れてしまう前に、僕は色んなものに触れていたいんだ。ああ、心配しないで。僕はもう死ぬ覚悟をしているから。君は言わずもがな、かな。

あと三分だね。
僕らは、世界にとって大犯罪を犯すことになるのかな。
だって皆の三分後の未来は全部なくなってしまうんだから。
咲くべき花をすべて摘み取ってぐしゃぐしゃにして捨てちゃう事になるね。
別に、僕はなんとも思っていないけど、君はどうなのかな。

そうだ、僕の君への気持ちを語ろうか。
出会ったとき、まだ君は純粋で真っ白で、美しかった。
夢と希望と、たくさんの愛に包まれて、僕にはとても幻想的に見えたんだ。
それから君の気を引くために僕は悪戦苦闘したよ。君、結構頑固だろ?僕は僕なりに君へのアプローチを繰り返した。それで、君は僕を認めてくれた。
でもね、君はいつしか、人間のことが「嫌い」になったんだ。僕を認めてくれた時は好きだって言ってくれたのに、急に僕らの関係はただの同僚になってしまった。
醜くて自己中心的で支配欲の強い――、そう、人類という生物を君は忌んでいた。
そういえば、君は僕のことを「人間」として、見てなかったよね。言っとくけど僕も人間だからね。君が忌むべき要素は十分に持ち合わせてる。だからこそ、僕と君との関係に亀裂が入らないかどうか心配だったんだ。いつか、君は僕さえも遠ざけてしまうのかと、ね。
だから、僕は世界中を探し回ったんだ。
どこかに、君の忌む人間をすべて消しゴムのように消し去る道具がないかって。

ああ、やっと気付いたかい?
僕は過去に嘘を付いたんだ。
君は言ったよね。『恋愛が一番人間の感情の中で不必要だ』って。だから、僕が君に変な感情を持つのは絶対に止めてくれって。僕はあの時、君の言葉に頷いたんだ。
でも、ごめん。やっぱり諦められなかった。
ホントなら、君がこうなる前に止めればよかったのにね。僕は優柔不断だから、君に嫌われるのが怖くて何も出来なかったんだ。
ただ君に嫌われないように、君が寂しくないように、こうやってたまに遊びにくることしか出来なかった。
ああ、そんな顔をしないでくれよ。どうせ僕らはあと数分で死ぬんだ。

『――最強最高人工殺戮兵器作動まで、あと三十秒』

……もうちょっとだね。
心残りはない?覚悟は出来てる?もし未練なんかあったら、今のうちに言っときなよ。

『――最強最高人工殺戮兵器作動まで、あと二十秒』

そうだ、最後に君に言っておきたい事があるんだ。

『――最強最高人工殺戮兵器作動まで、あと十秒』

僕は、君のことを永遠に――――





「――ッ…!私も、私も愛してる!人間が嫌いなんて言ってごめんなさい!貴方の気持ちを裏切ってごめんなさい…ッ!ねぇ、お願い!返事をしてよ…。聞こえてるの?ねぇ!!」







『――最強最高人工殺戮兵器、作動』








その時、乾いた音が小屋の中に響いた。
ぽん、と間抜けな音を立てて、『最強最高人工殺戮兵器』の蓋から色とりどりのテープが飛び出す。
「…………え?」
涙を流しながら青年に縋り付いていた女性が一人、拍子抜けしたような声を上げた。
「……今日が何の日か、知ってるかい?」
まるで死ぬ間際のように安らかな表情をしていた青年が、ころりと表情を変えて女性に語りかける。
女性は、ある一つの可能性に気が付いて青年の腕時計にある日付を見た。

『四月一日』

しばらく沈黙が部屋を支配する。
「よかった。君も僕の事を愛していたんだね。安心したよ」
女性はまだ信じられないといった風貌で青年を見やる。青年は特に何か変わった風でもなく、へらへらと笑みを浮かべ続けている。
「……じゃあ、何?最強最高人工殺戮兵器って…もしかして…」
「全てデタラメだよ。ああ、僕の君に対する感情は全て本物だけどへぶぁっ」
青年が全てを言い終わる前に、女性の見事な拳が顔にめり込んだ。

ひりひりする頬を抱え、青年は笑う。
そんな情けない彼を見て、女性は数年ぶりに笑顔を見せた。

------------------
友達とのスカイプ中に、三題噺しようぜ!ってなって即興で書いたモノ。
ちなみに死がどうのとか人間がどうのっていうのは私の主観です。大分デタラメです。
若干、星さんのショートショーリスペクト。






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